20世紀少年｜ハットリくんのお面が示したモノとは？

本記事では、20世紀少年・21世紀少年の「ハットリくんのお面」について解説してきます。

“ともだち”のお面（ハットリくん）の意味とは？

“ともだち”がつけていたお面（忍者ハットリくん）には、二つの意味が込められている。

ハットリくん＝服部＝フクベエ

一つ目の意味は、「ハットリ＝服部＝フクベエ」というもの。

子供のころ、フクベエは「フクベエ」というあだ名を嫌っていた。

自分の名前をちゃんと呼んで欲しいという思いから、「忍者ハットリくん」のお面を被って自己主張していたのです。

ただし、最終話でフクベエは小学校卒業時に死んでいたことが判明しました。これにより、カツマタがフクベエの気持ちに完全になりきっていたことがわかる。

変わり身の術＝影武者

二つ目の意味は、「影武者」というもの。

先述の通り、フクベエは小学校を卒業してすぐの春休みに亡くなっていました。

そのため、理科室でヤマネに暗殺された一人目の”ともだち”は影武者となる。※浦沢先生ご本人が「漫道コバヤシ第51回」で明言されています。

忍者ハットリくんには「変わり身の術」という技があり、それが「影武者」という意味を暗示しているのだと思う。

血の大晦日にビルの屋上でリモコンを持っていた”ともだち”も影武者でしたからね。

つまり、忍者ハットリくんのお面は、「ハットリ＝服部＝フクベエ」と「変わり身の術＝影武者」のダブルミーニングを持つアイテムなのです。

ハットリくんの出現シーンを分析

実は、忍者ハットリくんのお面を被った”ともだち”の登場シーンは少ないのです。

少年時代の”ともだち”はほとんどの場合、ナショナルキッドです。フクベエも素顔のままで登場します。

また、大人時代の”ともだち”は、お面ではなく、友達マークがついた覆面マスクをかぶっていることがほとんどなんです。

3巻 第3話（対決）

3巻第3話（対決）では、第169回ともだちコンサートにハットリくんのお面をかぶった”ともだち”が初登場します。

この回で、カンナの父親が”ともだち”であることが明らかとなる。

登場した”ともだち”がカツマタなのか影武者なのかは不明ですが、個人的にはカツマタであると考えています。

その理由として、その後の同窓会でフクベエ（カツマタ）がケンヂに会った時の最初の言葉が「おまえ変わんないなあ、ケンヂ」だったからです。

普通なら「久しぶり」という言葉が先に出るものですが、これはともだちコンサートで既に「久しぶり」と言っていたからこそ、この言葉が出なかったのではないかと思われます。

また、ケンヂがお面の少年を思い出すシーンが描かれますが、「ハットリくんのお面をかぶった姿」でした。

これはケンヂの記憶がかなり曖昧だったというのもありますし、コンサートで会った”ともだち”がハットリくんのお面をしたせいだと思われる。

実際には、ナショナルキッドのお面をかぶったサダキヨのことだった。

7巻 第9話（対面）

7巻第9話（対面）では、血の大晦日に「ハットリくんのお面の人物」がビルの屋上でリモコンを持って登場している。

この人物は、フクベエ（カツマタ）と一緒に落下してしまいますが、後に「影武者」であったことが明らかになります。

8巻 第3話（ケンヂの歌）

8巻第3話（ケンヂの歌）では、太陽の塔のモニュメントに立ち、ハットリくんのお面を被った”ともだち”がケンヂと対面し、ケンヂに素顔を明かします。

このシーンでの”ともだち”は、影武者ではなくカツマタでしょう。

8巻 第8話（成績）

8巻第8話（成績）では、ヴァーチャルアトラクション（VA）に入った小泉が、開始と同時にランニングシャツを着たハットリくんのお面を被った少年と出会います。

また、9巻第2話（悪夢）で、小学校の屋上で小泉が「ハットリくんのお面を被った少年の素顔」を見てしまう。

素顔は大人のサダキヨの顔だったのだが、屋上にはナショナルキッドのお面を被ったもう一人のサダキヨもおり、不自然な演出となっています。

おそらく、これはVA（ヴァーチャルアトラクション）がまだ不完全であり、”ともだち”の正体に辿り着けないように設定されていたためでしょう。

また、サダキヨも”ともだち”の影武者として利用されており、ハットリくんのお面を被っていたのかもしれません。

12巻 第11話（銃声の正体）

12巻第11話（銃声の正体）では、ハットリくんのお面を被った”ともだち”が夜の理科室に現れます。

しかし、山根に射殺され、オッチョにその素顔を見られてしまう。顔はフクベエだが、その正体は「影武者」でした。

この暗殺劇は、「しんよげんの書」に書かれた「かれはいちどしんでよみがえるだろう」という予言を再現したものであり、さらに21世紀少年上巻で「カツマタがかつて見た夢の光景」でもあったことが明らかになります。

おそらくカツマタは、自分に不思議な力があるという願望を叶えるために、この予知夢を現実のものとして仕組んだのでしょう。

18巻 第10話（聞いてはいけないもの）

18巻第10話（聞いてはいけないもの）には、万丈目の回想シーンが描かれています。

フクベエ（カツマタ）と思われる人物が、例の計画（世界征服・人類滅亡計画）とサークル活動を持ちかけます。

「ハットリくん、ナショナルキッド、ともだちマークのマスク」三つのお面からハットリくんを選び、「僕は、これがいいと思うんだ。」と万丈目に語ります。

ハットリくんのお面を被っていることから、すでにカツマタの影武者になっている可能性が高い。万丈目は、暗殺された影武者の”ともだち”を本物と思っていたので、早々に騙されていたのでしょう。

このシーンを最後に、ハットリくんのお面は登場しません。

以上から、ハットリくんのお面は、「フクベエを伝えたい時」と「影武者の時」を使い分けていると考えられます。

ケンヂたち同級生に会う時は、あえてハットリくんのお面を使ってアピールし、それ以外の時は影武者を暗示しているのでしょう。

12巻でフクベエ（影武者）が死んで以降の”ともだち”は、忍者ハットリくんのお面を選んでいません。

これは、カツマタがフクベエになりきって世界征服（世界大統領）を達成し、自分の予知夢を再現できたからでしょう。

カツマタは、フクベエを利用し尽くしたことで、その役割を終え、自身の計画である「人類滅亡計画（反陽子爆弾）」を進めることに集中したのです。

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20世紀少年｜ハットリくんのお面が示したモノ

考察してみると、ハットリくんのお面には、巧妙なトリックが仕組まれていたのです。

「20世紀少年」は、ハットリくんからフクベエ、そして最終的にカツマタが正体であるという非常に複雑な構図を描いています。

だからこそ、”ともだち”の正体探しで、非常に盛り上がったわけです。

当時お面のアイディアは、衝撃的でフクベエだとわかった時、感動した記憶すらあります。

しかし、浦沢先生のインタビュー本『描いて描いて描きまくる』によると、”ともだち”とは誰でもなく、括られた存在とのこと。

「”ともだち”は誰」というよりも、その不気味な存在そのものが大事だそうです。

つまり、ハットリくんのお面をかぶっていようが、ナショナルキッドであろうが、それは「”ともだち”という象徴」であり、特定の人物であるかどうかは重要ではないのです。

解き明かすのは野暮であり、浦沢先生自身もそこにフォーカスして描いていなかったことがわかる。

だからこそ、クラスにいた薄い存在のカツマタが黒幕になったわけです。