「おやすみプンプン」とは、浅野いにお先生による日常系青年漫画。
2007年より週刊ヤングサンデー、その後2008年から2013年までビッグコミックスピリッツで連載。全13巻で完結済み。
- おやすみプンプンの最終回について
- プンプンと愛子ちゃんのラストについて
本記事では、「おやすみプンプンの最終回」について解説しています。
おやすみプンプンの最終回(ラスト)までのあらすじ
愛子の母親を殺害し、逃亡生活を始めたプンプンと愛子。
過去に約束した鹿児島を目指した後、種子島へと足を運ぶ。
そこで、住み込みの仕事が見つかりそうになり、プンプンとの同棲を期待する愛子。
しかし、すでに警察の手は迫っていた。
二人の逃亡生活は、絶望を背負ったまま歩み続ける。
おやすみプンプンの最終回(ラスト)の解説
愛子は、自殺してしまう。
その後、プンプンは、愛子との思い出の場所である廃工場で自殺をはかるが、失敗する。
南条幸に救出され、プンプンは臨んだラストを迎えることができなかった。
そして最終回は、かつてのクラスメイト晴見(ハルミン)目線に。
プンプンとは、街中で偶然の再会する。
他愛のない会話をしながらも、微妙に噛み合わない。互いにかつての自分ではないから、それは成長を感じさせるものだった。
晴見から見たプンプンは、仲間がいて幸せそうに見える。だが、そんなことはなく、プンプンはただ生きるしかなかった。
そして最後の最後まで、晴見はプンプンの名を思い出せなかったのです。
その後、晴見は先生としての日々を送りながら、新しい転校生が自分のクラスに加わるのを見守ります。
新入生の姿に、ある男子生徒が顔を赤らめる様子に描かれる。
それは幼い頃のプンプンと愛子の姿と重なり、物語はそんなシーンで終幕を迎えます。
文章だけで表現すれば、「噂通りの鬱展開」「バッドエンド」と感じられるラスト。
特に、愛子が自殺するシーンはかなり重い。
プンプンが寝ている間に、パンツをくわえた状態で首を吊っていた。おそらく、猿轡(さるぐつわ)としての描写であり、声をたてないようにするためだと思われる。
愛子が書いた七夕の短冊に「あなたがずっと私を忘れませんように。」とあったのは、心をえぐられた…。
わたしは初めて読んだ時は学生だったため、「救いのない鬱漫画」「アート作品」という認識をしていた。
悪い言い方をすれば、「サブカル好き、こじらせ野郎のバイブル的な…。」(まぁ当時の自分なんですが…)
しかし、改めて読み直すと、様々な伏線や深いメッセージが散りばめられており、多面的な魅力があります。
比喩表現が多いため読解が難しいが、次の項目で解説していきます。
おやすみプンプン最終回の考察|春美(ハルミン)が意味するものとは?
先述したが、最終回はかつてのクラスメイト「春美俊太郎(ハルミン)」の視点で描かれている。
春美(ハルミン)とプンプンの接点は、「2巻前半と最終話のみ」。
では、なぜ春美視点になっているのか?
春美は学生時代にプンプン母との接点があり、その際にプンプンと感受性が似ているという描写がある。
加えて、プンプンは初恋の愛子と死別し、春美は高校時代に事故にあった彼女と別れている。
どことなく共通点がある二人を対比することで、深い意味を感じた。
① 本当の自分と他人が思う自分のギャップ
春美視点からプンプンを描くことで、「本当の自分」と「他人が思う自分のギャップ」の二面性を表している。
プンプンからすると、「愛子に殺されること」がハッピーエンドだった。
しかし、叶わない願いとなり、孤独に生きている。
自分の都合よく罪を背負って、死ぬ勇気も覚悟もない。
雄一の言葉を借りるなら、生きる屍(バッドエンド)。
しかし、春美からみればプンプンは孤独ではなく、仲間がいて幸せそうに見える。
むしろ春美自身は、普通の幸せを手に入れているようにみえるが、実際には不満や退屈を感じていた。
南条は自分の主観だけで他人を見過ぎなんだよ!!自分に見える範囲だけで相手の人間性を決めるなんて愚かだって言いたいの!
おやすみぷんぷん 12巻P48から引用
上記は、蟹江(姉)から南条幸に向けられた言葉である。
人それぞれの人生があり、主観で見ただけでは何も判断できない。けど、人間は主観でしかものを捉えられない。
例えば、SNSなどで見かける写真は、主観で見れば人生謳歌しているように感じる。しかし、実際にはその裏で苦しみを紛らわしている人も少なくない。
このような二面性を表現して、締めくくったように感じた。
② 過去は風化する
- 145話:プンプンは夢の中で愛子に対し、少しづつ人生が前に進んでいると伝える。そして、最後の願い「あなたがずっと私を忘れませんように。引用:12巻145話」を叶えられないことを懺悔する。
- 146話(最終話):晴見は転校した当時、すごく寂しかった。しかし、再会時にプンプンの名前を最後まで思い出せなかった。
上記のような点から、「過去は忘れてしまう。そして前に進む。」というメッセージを感じた。
たとえ愛する人が死んでも、時間が解決し、過去の出来事は遠い記憶へと変わる。
人類は滅亡しないから、前に進まなければならない。
春美の転校も同じで、時が流れれば、過去の友人の影は簡単に薄れる。
人生は時に、過去を見ないふりをして、前に進まなければならない。(南条が過去を捨てることで、一歩前に進んだ気がすると言っていたように。)
残酷な現実だが、大人になるということは「都合の良さ」「ずるさ」みたいなものと受け入れる必要がある。
人が前に進むための過程を、伝えているように感じた。
③ 普通の難しさ
作品を通じて繰り返し登場するフレーズがある、その一つが「普通」。
先述したが、春美は、世間が描く普通の幸せを得て、普通の大人になっている。しかし、そこには退屈のようなものを感じていた。
普通とは当たり障りなく生きることができ、居心地の良い状態。
ただ、何も起こらないから、退屈や憂鬱を感じるです。
しかし、それが「幸せ」。
例えば、大切な人を失ったり、病気や怪我に見舞われたり、世界が終わったらどうでしょう。
当たり前だと思っていた日常が崩れた時、「退屈で普通な日々が幸せだった」と感じるんです。
春美は高校時代、彼女との日常を、事故によって失った経験がある。だから、可能な限り普通=退屈を選んだのだと思う。
(春美を登場させたのも、このような経緯があったからかもしれません。)
対照的な二人だけど、平凡な日常の憂鬱さ、それと同時に普通の難しさを感じました。
波乱万丈な生き方をしたプンプンも、まっとうな人生を送った春美も、世界からみればちっぽけであり、他人からみれば普通の人なんですよね。
おやすみプンプン最終回の考察|南条幸の創作物
おやすみプンプンを最終回まで読むと、一つのことがわかる。
それは、おやすみプンプンとは、「南条幸がプンプンの経験をベースに描いた成長物語(漫画)」であるということ。
具体的に言えば、143話以前が南条幸の漫画作品。144話以降は漫画のエピローグです。
表向きの目的は、読者の人生に影響を与えて、現実と戦う漫画を作るため。
裏の目的は、南条幸がプンプンを自分の環境下において、飼いならすにするためだと思う。
- 142話:かつて廃工場で見た天の川は、ウソの表現だという事がわかる。(幼少期の希望みたいなもの)
- 143話:プンプンが廃工場で自殺に失敗し、南条に救われるが、この廃工場は、プンプンと愛子の思い出の場所であり、南条との思い出の場所ではない。南条が来るタイミングが良すぎる。
- 143話:プンプンはモノローグ(黒背景・白文字)で会話をするが、突如南条のモノローグに切り替わる。プンプンのセリフは、最初から南条が語っていたことがわかる。
- 143話:「…君は、あたしだけのもの。(引用:143話)」で締められる。
- 144話:南条が次の漫画の構想として、主人公をプンプンと同じ鳥にしている。
- 144話:プンプンが、人の姿にで表現されている。
- 144話:プンプンのモノローグ表現が、通常の吹き出しになっている。
- 145話:プンプンが南条の漫画に協力しているというセリフがある。
上記は、142話から最終回に向けて感じた違和感です。
今までとは少し表現が異なるため、この考えに至りました。
「南条幸の漫画であること」を念頭に置いて読むと、数多くの伏線が散らばっており、計画的に書かれていることがわかるんです。
特にわかりやすいところで言えば、143話でプンプンのモノローグ(黒背景の白文字のコマ)が、突如南条の言葉に変わる点です。
振り返れば、62話で南条の感想ノートに書いたプンプンの文章が、1話の書き出しと酷似している。
これは、南条がプンプンの感想文を流用して、おやすみプンプンという作品を作ったからではないでしょうか。
つまり、プンプンのモノローグ(ナレーター?)は、1巻から南条が語っていたということが予測できる。
浅野いにお先生のインタビュー記事で、「本作においてモノローグは、実はプンプンではなくて“別の語り部”がプンプンの言葉を代弁しているというスタイルで進んでいくんです。引用:ビッコミ」と記載がある。
他の点にも触れていきます。14話で廃工場の屋上にいる謎の男が、141話で大人のプンプンだったことが明かされました。
この伏線は、不自然ですよね。つまり、プンプンの世界は、創作物の可能性が高い。そもそも、創作物でないとペガサス合唱団やフィクション表現の説明がつかない。
加えて、145話でプンプンが南条の漫画に協力しているという描写があることから、これが後の「おやすみプンプン」なのではないでしょうか。
最後にもう1点。
この物語は、七夕(7月7日)や天体が親密に関わっており、プンプンが彦星、愛子が織姫という裏設定は明らか。(愛子の芸名は、織原愛子。鹿児島の親戚も織原ですしね。)
プンプンの運命の人は、愛子でありそれは絶対的なもの。
しかし、7巻77話には、南条が登場して、143話でも7月7日にプンプンを南条が救っている。運命の数字に、愛子ではなく南条を登場させているんです。
愛子の自殺を7月7日にしても良かったはず。
つまり、これは南条がプンプンとの再会を7月7日にしたい乙女心。わがままや独占欲の現れなのではないかと感じた。
このように深く観察していくと、単純な鬱漫画ではない構成を感じることができる。
お手元にあるなら、ぜひもう一度読んでみてください。様々なフィルターを通してみると、めちゃくちゃ面白いんですよ。
※上記の考察に関して調べたら、既に同様の考察があったので、これ以上は省きます。(考察はパクったわけではありません。5周くらい読み直し考察文を書いた後で調べました。)
おやすみプンプンの最終回を読んだ感想
単なる「鬱漫画」として括れない
『おやすみプンプン』は、単なる「鬱漫画」として括れない、深い魅力を持つ作品です。
さまざまなキャラクター視点で進行し、登場人物のリアルすぎる心理描写や社会的背景が、自分を投影させる。
一人ひとりが丁寧に描かれ、それぞれの人生がリアルに感じられるからこそ、物語は深く心に刺さります。
読了後は、余韻というか…虚無感…が湧き上がり、言葉にできませんでした。
ストーリーの積み重ねが多いため、掴みどころがなく、人によって解釈がかなり異なると思う。
鬱漫画特有の「不幸な事故・運命」がほぼ無いにも関わらず、ここまで重たく表現できる点は天才と言わざるを得ない。
ただ一つ言えることは、非常に面白いです。間違いなく名作。
だから、「鬱漫画として括らずに、何度も読み返してほしい」
わたしは学生の時に読んで「自意識過剰な主人公が、ウジウジ悩み続けて、周囲を巻き込む鬱漫画」という解釈をしていた。
しかし、繰り返し読むことで、「プンプンが大人に成長する過程」を描いた、壮大なストーリー構成を感じることができた。
純文学のような伏線が多いのも、作者が初めから終わりまでを見越して、計画的に書かれていたからですね。
おやすみプンプンの最終回(最終巻)の推しコマ
推しコマ1:不思議ちゃん気取り
おやすみプンプン 13巻から引用 浅野いにお / 小学館
上画像は、141話の南条・蟹江・ゲス美の雑談シーンである。
このちょっとしたセリフに、おやすみプンプンの醍醐味がある。
おやすみプンプンは、サブカルチャー好きな人が選びがちな作品で、作中であえて風刺を利かせる場面がある。
それがこのセリフである。
思春期は、不思議ちゃん気取りで、自分が特別な存在ではないかと何かを求める。
このような経験をした人は、多いのではないでしょうか。
メインの読者層が黒歴史に思い出しそうな一言を、サラッと会話に含ませる点が最高に上手い。
作中には、「絶望ごっこ」「不幸自慢ってうざい」など、中二病者やメ〇ヘラを刺激するような言葉が使われる。
南条幸は、浅野いにお先生を投影したキャラクターであり、おそらく自戒や自虐も含めているのかなと想像しています。
推しコマ2:愛子との決別
おやすみプンプン 13巻から引用 浅野いにお / 小学館
上画像は、145話で「プンプンが、夢の中で愛子と決別するシーン」です。
雑な言葉で表現するなら、このシーンがめちゃくちゃきつかった。
幼少期はキラキラした希望で溢れていて、愛子と幸せになれるように感じた。
なのに気づいたら歯車が狂い、愛子は自殺した。
読むことが辛くて、なんと表現して良いかわからない。報われなすぎる愛子にさすがに同情してしまった。
おやすみプンプンの最終回を読んだ人の口コミ・感想
王道好きならおやすみプンプンは×
ハッピーエンド&バッドエンドとも言えない最終回やシュールな場面ダークな部分ありで好き 最終回だけなら最高のハッピーエンドだけどハッピーエンド=皆んなが幸せとは限らないと言うリアルなシーンが好き 主人公の心境の変化を見ると大人になるってなんだろ
引用:X
おやすみプンプン全話読破。前半が精神的に辛くて挫けそうだったけど後半は大丈夫だった。 想像していたより読後感は悪くない。個人的にはむしろあそこまでいってこの終わり方なら良き終わり方とすら思う。最終回のプンプンの最後の行動見てちょっと泣いた
引用:X
おやすみプンプン読んでるとマジで自分の境遇と照らし合わされたりもして鬱になってくるw だけど鬱漫画読んだり鬱ロック(自分の中ではsyrupとかかまってちゃんがそれのジャンルかな)聴いたりしてると、みんな人生クソだと思いながらも頑張ってるんやな、俺も頑張ろって励まされるからそこによさがある
引用:X
『おやすみプンプン』読み終わった… 鬱漫画って言われるだけあって超きつい… 終盤のヒロインが自殺した所から自分の中の何かが切れてもう涙が止まらんかった… てか今も泣いてる
引用:X
#おやすみプンプン 全巻読破しました 鬱漫画って言われてるけど そこまでの鬱要素は無く 寧ろハッピーよりな気持ちで楽しく読めました めちゃくちゃ良かったからまたボンヤリ忘れてきたころに読み直します 画像の三名が特に好き 漫画家の人とか清水と一緒にいるやつも好き
引用:X
読むのがきつすぎてしばらく中断してた、おやすみプンプンを読み切った。本気で読んだ。本気で読まなきゃ読み切れなかった。ほんとにきつい。読んだのを本気で後悔してるけど、でも読んで良かったとも思う。あの終わり方は正解だと思う。正解だからこそきつい。
引用:X
おやすみプンプンの「最終回」をお得に読む方法
浅野いにお先生の作品には、「おやすみプンプン」以外にも、「ソラニン」「うみべの女の子」「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」など作品があります。
プンプンが好きなら「虹ヶ原ホログラフ」あたりもおすすめです。
興味があれば、ぜひご確認ください。
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本記事のまとめ|おやすみプンプン最終回。ラストを解説
おやすみプンプンの怖いところは、前触れもなく「気づいたら鬱展開になっている」ところだと思う。
心構えができないから、ふと気づくと感情が闇に浸食されるのです。
確かに鬱漫画ではあるが、純文学的な要素も含んでいると思う。
表面的な部分だけではなく、汲むべき描写を読み取らないと分からないことが多い。
それがこの作品の味の一つ。
わたしにとって印象的だったシーンは、父親からの手紙が、実は母親からのものだったとわかるシーン。泣きましたわ。
わざわざ野球中継を隠れて確認していて。本当はプンプンのこと大好きなのに…。(プンプンの中でもベタなシーンだけど最高じゃない?)
こんなにさまざまな感情にさせてくれる作品は、滅多にありません。
文章で魅力を伝えきれないて悔しい。
最終回を見ていないなら、ぜひご自身で確認してください。「おやすみプンプン」は、自分で体験する価値のある作品なのです。