「おやすみプンプン」とは、浅野いにお先生による日常系青年漫画。
2007年より週刊ヤングサンデー、その後2008年から2013年までビッグコミックスピリッツで連載。全13巻で完結済み。
- 神様の正体とは何だったのか?
本記事では、おやすみプンプンで登場する「神様」について解説・考察していきます。
おやすみプンプンにでてくる神様の正体は何だったのか?
おやすみプンプン 1巻から引用 浅野いにお / 小学館
「神様神様チンクルホイ。」と唱えると、プンプンの周囲にでてくる神様(アフロのおじさん)。
プンプンの相談相手になったり、時には余計な一言を放つ謎のキャラクター。
① 神様とは自問自答
「神様神様チンクルホイ。」
「…そう唱えると神様が来てくれるって、子供の頃、叔父さんに教えてもらったんだ。」
「いつからだろう…それがただの自問自答と気づいていたのは。」
おやすみプンプン 12巻 P213 引用
神様とは、プンプンの自問自答。
プンプンの一部であり、自身と対話していたことがわかる。
そのため、自身が知らないことやどうにも出来ないことに関して、神様は何もできない。
性衝動、闇、孤独、葛藤など、プンプンに負の感情が起きた際に出現するので、信仰の対象というわけではない。
その証拠に、南条幸と出会い、人並の幸せを感じている時には、神様はほぼ出現していない。
つまり、人知を超えた神様的存在ではなく、プンプンの精神の一側面だと言えるでしょう。(イマジナリーフレンドみたいなものですかね。)
② 神様とは自意識と自我
神様は、プンプンの内面的な対話であり、「自意識や自我」に解釈できると思う。
自意識とは、「他者にどう思われるかという」客観意識。自我とは、「他者を排除した自分の本音」主体意識。
つまり、誰にでも当てはまる普遍的なもの。
プンプンは、過去に好きな人を傷つけた経験から消極的な面があり、自意識が強い傾向にある。
しかし、愛子に対する強い感情や性的な衝動が表れる時、自我が前面に出ます。
例えば、自我について顕著に描かれるのが、愛子の母親を殺害したシーンです。
きっと僕は待っていたんだと思う。
この瞬間を。
おはよう、プンプン。
おやすみプンプン 11巻 P48~50 引用
「この瞬間を待っていた」という内面的な声が、自我を強調しています。
このシーンで、神様の姿が最も大きく描かれているのも、プンプンの自我が強まることと関連しているかもしれません。
愛子を母親から救出し、自分のだけの人にしたいという本音。
プンプンが「殺す決意」を固めた瞬間、「おはよう」という言葉が使われるのは、「新たな自我の目覚め」を示していると考えられます。
神様の存在は場面や人によって異なる
神様は、場面によってプンプン以外のキャラクターの前にも現れることがあります。この点について考察していきます。
① 降り注ぐ神様は何だったのか?
第140話では、ペガサス合唱団(星川としき)が目だし達磨と黒ひげ危機一髪を行い勝利する。この勝利によってプンプン星と巨大な達磨が爆発し、多くの流れ星が現れる。
流れ星は、神様(アフロのおじさん)として描かれています。
そして、この流れ星によって物語に大きな変化が起きます。それは、7月7日に南条幸が廃工場に行くきっかけとなることです。(三村がゲス美に会いに行くきっかけにもなる。)
南条が廃工場に行くことで、プンプンの自殺は失敗し生存するルートへと変わる。
目だし達磨は、翠から受け取ったお土産であり、プンプンが投げ捨てた象徴的なアイテムです。
この当時のプンプンは、「身勝手な両親・翠・雄一」に振り回されて大きな闇を抱えた。そんな大人の都合を受け入れられない怒りを表現するために、お土産の達磨を投げ捨てたのです。そして、自殺願望を覚える。
つまり、目だし達磨は、プンプンの闇や自殺願望と考察できる。
もしも達磨が勝ってしまった場合、プンプンは南条と会うことができず死亡するルートを辿るでしょう。
星川としきの言動に、「7月7日、乳の川と希望がすれ違う。(12巻134話)」というものがある。
乳の川はギリシャ神話で、ミルキーウェイ(天の川)です。
以上から考えられることは、天の川とすれ違う流れ星(アフロのおじさん)は「希望の表現」。
だから、南条はプンプンを見つけることができ、ゲス美は三村に会うことができた。人生に絶望している雄一おじさんには、希望(子供)が生まれた。
※色々考察した内容があるのですが、複雑になりすぎるので簡略化しています。
② 蒼空の左目の神様は何だったのか?
神様(アフロのおじさん)は、プンプン以外のキャラクターにも現れます。
例えば、叔父の雄一の息子、蒼空の左目にもこの存在が見られます。
これがどのような意味を持つのかは、明確ではありません。
ただ非常に小さく描かれていることから、どんな存在にも自我や自意識が存在し、誰もがプンプンのような内面的な葛藤を持つ可能性があることを示していると解釈ができる。
③ 神様は雄一にも存在した
神様は、プンプンの叔父「雄一」にも存在した描写がある。(4巻39話88P)
雄一は過去のトラウマに苦しみ、人間を嫌い、自分を汚れたものと感じていました。
しかし、翠とトラウマに向き合うことで、杞憂であったことを知り救われる。
トラウマから解放されだが、雄一は贖罪に生かされていたことがわかる。
自分が唯一信じていたもの(神様)が、すなわち罪悪感だったことを理解します。
この場面で描かれる神様は、アフロのおじさんではありません。
おそらくプンプンが信じる神様とは、異なる種類のものを表現するためだと思われる。
つまり、人は困難な時に何かにすがるものであり、その存在が内面に宿る「神様」という意味だと考えられます。
神様は1人ではなく、人それぞれの中に様々なかたちであるということ。
④ 和田の両目の神様は何だったのか?
和田とはペガサス合唱団の一員で、星川としきとは旧友。
プンプンのクラスメイトだった関との会話中に、和田の両目が神様(アフロのおじさん)になるシーンがある。(11巻 119話 P182)
- 宗教家の息子(星川としき)に取り行って小金を稼ぐこと。
- 星川としきを世界に知らしめたい。
- 人生をOMOSHIROで自由に楽しみたい。
和田の行動原理とは上記である。
性格的な側面から見れば、他人からどう思われるかは気にしていない。そして、自分への優先度が高く利己的である。
両目に神様についているということは、「自分の人生にしか見えていない」「自分のことしか見ていない」という表れなのかもしれません。
神様の登場回数
神様の登場回数は、全13巻で約40回。
終盤はプンプンの左目に滞在しているため、そこは1カウントとしています。
南条とのストーリーがメインとなる7巻付近は、登場回数が少なく、プンプンの精神が安定していることがわかる。
神様のメイン登場ページまとめ
1巻 P19・P54・P162・P183
2巻 P69・P106・P134・P149・P175・P186
3巻 P27・P46・P56・P71・P102・P189
4巻 P72・P88・P118・P146・P169・P180・P208・P212
5巻 P102
6巻 P152・P162・P197
7巻 P173
8巻 P199
9巻 P195
10巻 P55・P185
11巻 P48・P182・P198
12巻 P213
13巻 P56・P125・P138
おやすみプンプンの「最終回」をお得に読む方法
浅野いにお先生の作品には、「おやすみプンプン」以外にも、「ソラニン」「うみべの女の子」「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」など作品があります。
プンプンが好きなら「虹ヶ原ホログラフ」あたりもおすすめです。
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本記事のまとめ|神様とはもう一人のプンプン
メタ的な考察を避けていたのだが、神様は、プンプンを表現するための一つの技法だと思う。
プンプンは鳥のキャラクターのため、感情があまり読み取れない。だから自己投影しやすい設計になっているのだが、この表現だけでは心情の説明が不足しがちです。
そこで神様というキャラクターを通じて、プンプンの内面を対話形式で展開することにより、思考や感情がわかりやすくなるのです。
つまり、鳥のキャラクターにした副産物とも言えるでしょう。