【考察】おやすみプンプン｜ペガサス合唱団について考えてみた。

本記事では、おやすみプンプンに登場する「ペガサス合唱団」について解説・考察していきます。

※あくまでもわたしが感じたことを述べているだけなので、穴だらけの考察になっていることはご了承ください。

前提考察｜おやすみプンプンは南条幸の創作物

ペガサス合唱団の考察・解説をする前に、前提条件のお話をさせてください。

この条件を理解していないと、プンプンの世界の説明がつかないからです。

まず、『おやすみプンプン』は、プンプンの経験を元に描いた南条幸の創作物（漫画）です。

この件については、すでに非常に優れた考察記事が存在しますので、本記事での説明は簡略化します。（「おやすみプンプン 考察」で検索すると黒点について記載のある記事です。南条の漫画説はパクったわけではありません。わたしも5周くらい読み直して同じ結論に行きつきました。信じて…。）

南条の漫画説でわかりやすいところで言えば、143話でプンプンのモノローグ（黒背景の白文字のコマ）が、突如南条のセリフに変わる点です。

振り返れば、62話で南条の感想ノートに書いたプンプンの文章が、1話の書き出しと酷似している。

これは、南条がプンプンの感想文を流用して、おやすみプンプンという作品を作ったからではないでしょうか。

つまり、プンプンのモノローグ（ナレーター？）は、1巻から南条が語っていたということが予測できる。

また、浅野いにお先生のインタビュー記事で、「本作においてモノローグは、実はプンプンではなくて“別の語り部”がプンプンの言葉を代弁しているというスタイルで進んでいくんです。引用：ビッコミ」と記載がある。

https://alu.jp/series/おやすみプンプン/crop/e8tAYvX3lTHJvYb61mSO

144話、南条の新作漫画の主人公としてプンプン（鳥アイコン）が描かれている。三村の落書きということだが、これがそのまま使われたのだと思う。

また、注目すべきは、その右側にある4話目のメモ。「病院」「ラ」「商店街」という文字がある。

おやすみプンプンの4話目の内容は、「プンプン母のお見舞いで病院に行き、らぁめん珍歩に寄り（ち○ぽって…）、東口商店街に行く」ので、これらと一致している。

145話では、プンプンが南条の漫画に協力しているというセリフがあるので、これが後の「おやすみプンプン」なのではないでしょうか。

簡易的ではあるが、このような描写から南条の漫画説が裏付けられる。

具体的にどこからが漫画の世界かと言うと、143話までが漫画の世界（本編）。144・145話はプンプンの現実世界で、146・147話（最終話）は漫画のエピローグだと思う。

144・145話が現実の理由として、今までアイコンで描かれていたプンプンが、リアルな人間で描かれているため。また、夢の中での愛子との対話で、モノローグ形式ではなく吹き出しが使われており、今までと演出が大きく異なるから。

146・147話がエピローグの理由として、ハルミンの元カノ（高校時代）の写真がでてくるのだが、これが61話前後と同じ人物だからです。

146・147話が現実世界だった場合、南条の知り得ないであろうハルミンの元カノが、漫画の世界の61話と同一人物にはなりません。

細かい点で辻褄が合わない部分もあるかもなので、全話南条の漫画という設定で考えておいても良いと思います。

とりあえず、漫画の世界であり、プンプンの実体験を元に書いたフィクションという解釈でいればOKです。

解説・考察｜ペガサス合唱団について

まず、本題のペガサス合唱団について解説していきます。

ペガサス合唱団の目的は、「7月7日に地球が砕け散るのを回避すること」です。

具体的には、目出しダルマが地球に降ってくるので、それを阻止することになります。

ただ、これらの言葉は、ほとんどが比喩表現のため、そのまま読んでも意味不明な内容となっている。

少しずつ読み解いていきます。

アカシックレコードとは？

彼の宇宙ではこの世の始まりから終わり、

過去未来に起こる全ての事象は、

アカシックレコードと呼ばれる

巨大な円周をもった筒の表面に音階として

刻まれているという。

引用：おやすみプンプン 11巻 119話 P171

星川としきがよく使う言葉に「アカシックレコード」がある。

これは、そのままの意味で「宇宙誕生以来のすべての事象が刻まれたもの」。それがオルゴールと音階だと例えられている。

つまり、宇宙の歴史は、壮大な一つの組曲に置き換えられループしているという説。

そして、プンプンの世界では不安定な旋律が奏でられており、7月7日強烈な不協和音により、それまでの旋律は完全崩壊する。

その瞬間が「約束された絶望」である。

この不協和音を安定させるために、十二音階のメンバーを集めて演奏している。（1オクターブ＝十二音階のため、十二人必要なんでしょう。）

星川としき（ペガサス）は、「約束された絶望は避けられない」、その後の世界のことを「新世界」と唱えラヴァーズへの試練という見解をだしている。

「アカシックレコード」＝「すべての事象が刻まれたオルゴール・音階」
「7月7日の強烈な不協和音」＝「約束された絶望」
「それ以降の世界」＝「新世界・ラヴァーズへの試練」

超ひも理論とは？

同じく、星川としきがよく使う言葉に「超ひも理論」もある。

こちらは実際にある理論の「超ひも理論」のことでしょう。

超ひも理論とは、簡単に言えば物質（素粒子）は点の集合体ではなく、「小さな弦（ひも）で構成されている」という考えになります。

星川はこの理論を応用し、アカシックレコードが音階や旋律だと理解しています。

そして、夢の中で特定の旋律を聴くようになることで、「未来に触れたり」「不協和音を調和させる旋律を編み出す能力」を持っています。

三村の部屋に異空間から現れたり、プンプンの引き出しからでてきたのも、この超ひも理論に基づく力によるものです。

引き出しからの登場は、ドラえもん（タイムマシーン）のオマージュであり、過去or未来から訪れているとも読み取れる。

また、「グッドバイブレーション」というフレーズも、超ひも理論において素粒子が識別される「振動」からインスピレーションを得ている可能性があります。

夢の中で未来の予知する旋律を聞くことができる（未来予知）
超ひも理論により「未来に触れる」「不協和音を調和させる旋律を編み出す」

ペガサス合唱団や星川としきが行ったこと

上記は、ペガサス合唱団や星川としきの行動をまとめたものです。

彼らの行動は、作中でサイドストーリーとして展開されます。

これらのエピソードは物語全体に直接的な影響を与えるわけではありませんが、プンプンの人生に間接的に影響を与えていることがわかる。

特に107話のエピソードがわかりやすい。

プンプンと愛子は自動車教習所で再会したが、お互い嘘をつき合う。そして、プンプンの強引な性衝動により愛子を幻滅させてしまう。

プンプンは何とか関係を回復させようと愛子に謝罪するが、暖簾に腕押し。

その後、ペガサス合唱団が「翼をください」を演奏したことで、愛子は小学校時代の記憶を思い出し立ち止まる、そして帰ろうとします。

二度と会えなくなってしまうことに焦ったプンプンは、自身の嘘を告白する。（おそらく小学生時代を思い出し、愛子を失いたく無い気持ちがピークを迎えたためだと思う。）

その結果、お互いに嘘をついていることがわかり、関係値が一気に回復する。

つまり、ペガサス合唱団の存在がなければ、愛子とプンプンが決別していた可能性がある。

彼らの行動は、意味のないものと思いきや、プンプンの恋愛やその後の人生に重要な影響を与えており、不可欠な存在であることがわかる。

そもそも、愛子とプンプンの小学生の思い出の曲（翼をください）を演奏している時点で、プンプンを中心に活動していることがわかる。

考察｜ペガサス合唱団とは何だったのか？

では、ペガサス合唱団について考察していきます。

何度も言いますが、あくまでもわたしが感じたことを述べているだけなので、穴だらけの考察になっていることはご了承ください。

ペガサス合唱団とは、プンプンの世界におけるフィクションであり、「プンプンの自殺ルートを回避し、南条とプンプンを結びつける」ための存在です。

その結論に至った経緯を記載します。

前提考察｜おやすみプンプンの目的

先述したが『おやすみプンプン』は、プンプンの実体験を元に描いた南条幸の漫画です。

その目的は、「南条自身がプンプンを独占するため」「愛子を失った現実をプンプンに受け入れさせるため」にあると思われる。

その理由として、143話では、廃工場でプンプンが自殺未遂をし、南条に救出されるが、このタイミングが出来すぎている。

2人とも廃工場は思い出の場所であっても、プンプンと南条の思い出の場所ではないため、この場所で出会うことに無理矢理感が否めない。

143話の最後のセリフが「…君は、あたしだけのもの」とある。

また、南条自身、自己のエゴから「プンプンは自分が守る」という強い意志の描写もある。

つまり、「南条がプンプンを見つけ出し、独占する」というラストに向けて作られた恣意的なものを感じるのです。

また、南条のセリフに以下のようなものがある。

あたいが描きたいものってのはさぁ…

感動とか泣きとかその場の甘やかしなんかじゃなくて、

そいつの人生そのものに影響したいの。

現実を忘れさせるための漫画じゃなくて!!

現実と戦うための漫画なの!!

おやすみぷんぷん 8巻P126から引用

このセリフは、『おやすみプンプン』を通して南条が読者に伝えたいことだけではなく、プンプンにも伝えたいことではないでしょうか。

愛子を失った現実と戦って欲しいということ。

つまり、読み手とプンプンに向けたダブルミーニング。

これらを目的を叶えるために、ペガサス合唱団というフィクションが存在し、プンプンの人生の岐路で現れているのです。

不協和音について

まず、星川としきの予言内にある「不協和音」について、南条の漫画説視点で読み解いてみる。

「約束された絶望」の情報をまとめると、「7月7日に強烈な不協和音が起き、旋律が崩壊し、目出しダルマが降ってきて地球が砕け散る」というもの。

便宜上例えるならそれは片目の無い目出しダルマが降ってくるからと言って差し支えないだろう….
つまりそれは「約束された絶望」であり、不可避であり決定事項なのだ。

おやすみぷんぷん 引用：92話

7月7日強烈な不協和音により、それまでの旋律はついに完全崩壊する。振動の乱れその瞬間が「約束された絶望」である。

おやすみぷんぷん 引用：119話

では、不協和音とは何にあたるのか。

不協和音とは、漫画の主人公（プンプン）にとっての絶望・孤独などの心の闇や、自殺願望ではないかと思われる。

というのも星川としきがこの予言について発したのは第54話。

それ以前に、プンプンの心が闇に支配されるシーンがある。それは、第42話で矢口先輩との約束を無下にして、愛子の手を握り返したシーンだ。

その際に、絶望・孤独・恍惚を感じ、人を裏切り蹴落とすことに高揚感を覚えてしまっている。そして、愛子からの鹿児島への誘いを断り、消滅願望を感じていた。

また、第50話では、翠に初体験を半ば強引に奪われ、帰宅すれば母は男と遊び歩いており、そんな現実に絶望した。

プンプンがベランダから飛び降りようとする描写があり、自殺願望が芽生えていることがわかる。

そして、第54話で星川としきが予言をした後に、第55話では「プンプンと蟹江梓」の近くで、ペガサス合唱団が不協和音を調和させる旋律を演奏している。

つまり、不協和音は主人公プンプンの絶望や孤独・自殺願望であり、その状況を緩和させるために、ペガサス合唱団が演奏したと言えるでしょう。

だから、蟹江梓とのデートの約束が成立したのだと思う。プンプンのメンタルを整えるルートへ導いているのです。

107話でプンプンと愛子の近くで演奏していたのも、プンプンのルート変更のためだと思われる。

目出しダルマの謎

同じく予言内にある「目出しダルマ」について、南条の漫画説視点で読み解いてみる。

「目出しダルマが地球に降ってくる」とあるが、このダルマは翠がプンプンに渡したお土産である。

これを受け取った時のプンプンは、「身勝手な親・翠・雄一」によって振り回されて大きな闇を抱えた。

第56話で、一線を超えた翠に、その事実が無かったものとして圧をかけられる。母親にはブチギレられ、トモダチ（男）と過ごすから家に帰ってこないでと言われる。

そんな大人の自分勝手な都合を受け入れられない怒りで、お土産の達磨を地面に叩きつけたのです。

それが反発し宇宙に飛んでいったものが「目出しダルマ」です。

つまり、目だしダルマとは、主人公プンプンの「闇や衝動性」と読み解くことができる。

約束された絶望から全体像を考察

では、「約束された絶望」を南条の漫画説視点で読み解いてみる。

便宜上例えるならそれは片目の無い目出しダルマが降ってくるからと言って差し支えないだろう….
つまりそれは「約束された絶望」であり、不可避であり決定事項なのだ。

おやすみぷんぷん 引用：92話

7月7日強烈な不協和音により、それまでの旋律はついに完全崩壊する。振動の乱れその瞬間が「約束された絶望」である。

おやすみぷんぷん 引用：119話

繰り返しになるが、約束された絶望とは、「7月7日に強烈な不協和音が起き、旋律が崩壊し、目出しダルマが降ってきて地球が砕け散る」というもの。

不協和音と目出しダルマは、漫画の主人公（プンプン）にとっての闇・衝動性です。

地球が砕け散るとは、漫画の主人公である「プンプンの死」。

プンプンが死んでしまえば、プンプンの世界・物語が終了するという意味ではないでしょうか。プンプンありきの世界の終了。いわゆるゲームオーバー。

強烈な不協和音は、もちろん愛子の死がきっかけでしょう。

つまり、約束された絶望は、「愛子の死によって、生きる目的を失ったプンプンの自殺」と置き換えることができます。

プンプンが死んでしまえば、作者である南条の目的が達成不可となる。

それを回避するために、ペガサス合唱団は、集団自決し、プンプン星で目出しダルマとの黒ひげ危機一発に勝利し、流星群を生み出した。

ペガサスは、刺し違えたが「勝利」という言葉を使っている以上、落下は回避できたと解釈して良いと思う。

第134話で「7月7日に乳の川と希望がすれ違う」とあるが、乳の川はギリシャ神話でミルキーウェイ＝天の川です。

となると、流れ星（アフロのおじさん）は「希望の表現」でしょう。

要約すると、7月7日天の川に流れ星が渡り、南条が廃工場に寄り道するきっかけとなる。そして、プンプンの自殺を防ぎ、南条はプンプンを捕まえることができた。

（流れ星は、プンプンと南条だけではなく、ゲス美と三村が再会するきっかけ、清水が死を逃れたことにも影響していると思われる。）

以上から、ペガサス合唱団は「プンプンの自殺ルートを回避し、南条とプンプンを結びつけるための存在」と結論づけました。

“約束された”という言葉を使っていたのは、南条の漫画だから初めからオチが決まっていたためでしょう。

そこに向けて、プンプンを導くようにアクションをしていたのです。

この漫画を読んだ当初は、「愛子が死に、愛子に殺されるというプンプンの願いは叶えられず、南条に救出され、残りの人生を生きていくこと」が、約束された絶望でありオチだと思った。

しかし、事象を分解していくと、微妙にニュアンスが異なることに気づき、このような結論としました。

ついでに他の点についても考察したので、残しておきます。

新世界とは

7月7日以降は新世界の始まりであり、ラヴァーズへの試練と説かれている。

時系列で考えると、新世界とは144話以降のことを指す。

つまり、愛子を失ったプンプンのその後の世界を指していると予測できます。

試練というのは、バッドエンドを迎えたプンプンが現実と戦うことでしょう。

また、星川としきが、7月7日以降の未来を見ることができないと言っていたのは、目出しダルマとの対決のために集団自決することが確定していたからだと思われる。

もしくは、144話以降は、南条の漫画ではなく”現実の世界”のため、フィクションの要素は付いてこれないからだと思われる。

そういう意味でも、144話以降が現実説は正しそうではある。

黒点は…

正直、黒点はイマイチ読み解けなかった…。

まず、黒点とは、宍戸社長を万引き冤罪にした”おばさん”だと断定されていた。

その後、プンプンの前にとしきが現れ、黒点に狂わされたラヴァーズと嘆く（97話）

黒点を排除するために、としき自身がおばさんをハンマーで殴る。しかし、おばさんは醜い行動をとらず、娘を守る行動を起こした。想定とは違う行動に、としき自身が困惑している。（115話）

黒点に対して疑問を覚えたとしきは、3つの仮説をたてる。そして、「人はみな黒点である」ことに気づく。（118話）

黒点とは人の心の惑いに巣食う魔物なのだという事を……

おやすみぷんぷん 引用：133話

最終的に、黒点とは「心の惑いに巣食う魔物」と結論づけ、仲間からの「信頼」により自分は乗り越えたと言っている。

文脈から、としき自身も黒点に該当した可能性があり、人はみな黒点というのが正しそう。

うまく読み解けなくで申し訳ないのですが、「人の心にある正義・信仰は、人それぞれにある。この世に、聖人君子などおらず、誰しもが闇を抱えている。自分の主観だけで、他人の人間性を見るのは愚か。」ということをメタ的に伝えたいのではないでしょうか。

う〜〜〜ん。わからん。

しかし、作者である南条が、「言いがかりをつけて逃げたクソババアも、絶対に絶対に見つけ出してやるから!!（97話）」と言っていることから、南条の私怨から黒点（冤罪おばさん）に制裁を加えた可能性も否定できない。

ただその場合、としきが、黒点と思われる人々のところに訪れている理由が解消できないんですよね…。

以上が、ペガサス合唱団の考察・解説となります。

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本記事のまとめ｜ペガサス合唱団について考察

本記事では、ペガサス合唱団について考察してみました。

裏付けが甘かったり、わたしの想像の域を超えない部分が多いので、その点はご了承ください。

ペガサス合唱団は謎発言が多いので、全てに理由を求めたり、紐解くことは野暮だと思うし、微妙にわからないくらいが丁度良いでしょう。

関の言葉を借りるなら「1か100じゃなくて、適当でいいじゃねーか適当で!!」って感じです。

個人的には、南条がメインストーリーで伝えきれなかった要素をサイドストーリーに投げ込んでいるようにも見えた。時事的なもの（3.11）などもありましたからね。

集団自決でコスモさん健康センターの事務所ごと燃やしたのも、「悪質な宗教によって人生が狂ってしまった少女」への弔いかなと。